今回は2ストのボアアップキットについて記事にしました。
ヤフオクでよく見る格安のボアアップキットがありますが、実際に取り付けてみると思ったよりも速くならない理由と体験した人は少なくないと思います。
台湾ボアアップキットが速くならない理由とおすすめのボアアップキットを紹介したいと思います。
本題に入る前にひとつ注意です。
今回、紹介しているのは2サイクルの台湾ボアアップキットに関してです。4サイクル用の台湾ボアアップキットは使ったことがないので正直、分かりません。
2ストはポートでエンジン特性が決まりますが、4ストのエンジン特性はカムによって決まっています。
なので、ピストンとシリンダーの耐久性があれば4ストの台湾ボアアップキットは使えるかもしれませんね。使ったことないけど。
台湾ボアアップキットが遅い(速くならない)理由
なんで、台湾製のボアアップキットが速くならないのか?
台湾製ボアアップキットが速くならない理由は、排気ポートの開くタイミングが遅いからです。
ボアアップ前のノーマル排気量が50ccの場合、50ccシリンダーよりも排気ポート開くタイミングが遅くなります。
だから、せっかくボアアップして多くの混合気を爆発できても排気のタイミングがノーマルよりも遅くなるので、トルクは増えたけど高回転回らないし速くなっていないと感じるわけです。
2ストのパワーバウンドは、排気ポートの開くタイミング、チャンバーの形状や長さによって決まっています。そして、パワーバウンドとは排気に流れてしまった未燃焼ガスがチャンバーから跳ね返ってきた圧力波と一緒に再びシリンダーの中に戻って、燃焼ガスが増えることでパワーアップすることです。
ポートタイミングが遅いシリンダーに交換した場合、爆発してから排気ポートが開くまでのタイミングが遅れます。
ノーマルよりも排気タイミングが遅れるということは圧力波の跳ね返りも遅くなりノーマルよりも低いエンジン回転数で、未燃焼ガスが燃焼室に戻りパワーバウンドが始まります。
逆にポート加工の高さを上げると、ノーマルよりも速いタイミングで排気が始まり、圧力波も速くシリンダーに帰ってきます。それに合わせて回転数も上がるためパワーバウンドの回転数も上がります。
台湾製ボアアップキットのポートが低い理由
そもそもなぜ、台湾ボアアップキットは純正と比べポートの位置が低くなるのか?
コピーだからポートの高さは純正と同じ位置ではないのか?
こんな疑問が出ると思います。
実際に見たわけではないので想像ですが、台湾製のボアアップキットは50ccのシリンダーをベースに排気量に合わせて、径を変えるためにボーリング加工しているからだと思います。
内径をボーリングして拡大した場合、下に向かって角度のついた排気ポートの高さは低くなってしまいます。
台湾製のボアアップキットが排気量ごとに、細かくラインナップがあるのは、50ccをベースにボーリング加工しているからだと思います。。
NSR用のボアアップキットだけでもノーマルの50cc排気量から63、65、68ccさらには72ccとピストンサイズが1mmごとにラインナップがあります。50ccよりも68ccの方がポートの位置は下がっているはずです。
実際には65シリンダーキットしか買ったことないので分かりませんが、65ccキットは純正よりもポートの位置は低かったです。
台湾製(中華)ボアアップキットを速くするには?
じゃあ、台湾製のボアアップキットはダメなのか?というとそうでもなくて加工ベースなら最適です。台湾製のボアアップキットを無加工でそのまま取り付けても、トルクが上がるだけで、パワーアップの実感はあまりありません。
加工することでボアアップの実力を発揮します。
だから、台湾製のボアアップキットは自分でシリンダーの加工ができる中級者以上のパーツで初心者にはあまりオススメできません。
ただし、これから2ストポート加工をいろいろやってみたい方には最適なベースシリンダーだと思います。
台湾シリンダーは安いし、材料の鉄が柔らかいので加工がしやすいです。
なので、加工前提であれば台湾シリンダーは使えます。
そもそも台湾シリンダーの購入を検討している方は自分で交換を予定していると思うので、ぜひポート加工にもチャレンジしてほしいです。
今回はNSRやNS1など、ホンダ水冷2ストエンジンでお話していますが、スクーターの場合は、パワーバウンドに合わせて駆動系の変速タイミングをセッティング出来ます。
なので、駆動系のセッティングが合えばパワーバウンドを維持したまま変速できるので、ボアアップしたのにパワーダウンしたといったことは少ないと思います。 まぁ、駆動系のセッティングはキャブセッティング以上に難しいと思いますが。。。
台湾製ボアアップキットはよく故障する?
続いてよく聞く中華ボアアップキットはよく壊れるといったウワサがあります。
確かに、昔グランドアクシスに乗っていて、ボアアップキットを組んだ時はよく抱きつきました。
当時、原因がよく分かっていませんでしたが、おそらくピストンとシリンダーのクリアランスの問題だと思います。
スクーターの場合、空冷エンジンなのでエンジンの温度は水冷に比べると上昇の幅が大きいです。ピストンとシリンダーのクリアランスが適切でない場合は、温度が上がるとシリンダーのクリアランスに対して、ピストンが膨らむので抱きつきが発生します。
台湾シリンダーは抱きついて、シリンダーとピストンを削ると調子よくなるって言いますが、これは削ることでクリアランスが適正になるからです。
それなら抱きつく前の新品の状態でシリンダーとピストンのクリアランスを測って、ピストンとシリンダーを削ってクリアランスを適正にしておけば初めから抱きつきは防止できます。
シリンダーを測定する時はシリンダーゲージを購入しないといけないので、シリンダーを測るよりも、ピストンを測る方が簡単です。
ちなみに、ピストンを削る時は旋盤に加えて、ペーパーで削っていました。
昔は知識もあまりなくて、途中で抱きついて、エンジンの再始動ができなくて何キロも押して帰ったり、途中で置いて帰ったりってことがよくありました。
ちなみにNSRなどホンダ水冷2ストエンジンの台湾ボアアップキットはクリアランスの問題で抱きついたことはありません。
ただし、前期の薄いラジエーターの場合。オーバーヒートには注意が必要です。 ボアアップしたことで爆発できる混合気の量が増えるのでエンジンの水温も上昇します。
初心者におすすめのボアアップキット
では最後にNSRやNS1の初心者におすすめボアアップキットを紹介して終わりにします。
NSRもNS1もNS50F基本的にはすべて同じ考え方でOKです。
理由はすべて同じエンジンなので。
最初に初心者おすすめのボアアップキットを紹介します。
ポンつけでそこそこ速くしたい。
ポート加工なんて道具もないからできない。
そんな方は、バイクパーツメーカーから発売されているボアアップキットがいいです。
理由は、排気量に合わせて、最適なポート加工をしているからです。
耐久性も維持しつつパワーも出るように設計されているのでそのままポンつけでも十分に使えることができます。
おすすめはキタコかデイトナのボアアップキットですが、デイトナは販売中止になったようです。残念です。
社外品のボアアップキットを組む時の注意
最後に社外品のボアアップキットを組む時にひとつ注意です。
社外ボアアップキットに付属しているピストンサークリップで「のの字」型のピストンサークリップが付属しているキットがありますが、こののの字型のサークリップは使わない方がいいです。
理由はサークリップが切れてシリンダーとピストンがお釈迦になる可能性があるからです。
過去に、レース用だからいいかとのの字サークリップを使用したら、サークリップが切れてエンジンつぶれました。
サークリップを使用する時は純正のC型サークリップを使用しましょう。
なぜC型は切れなくて、のの字型のサークリップは切れるのか?
エンジン始動中にピストンピンは横に動いていて、サークリップと接触しています。
のの字型のピストンの場合、ピストンの内径に飛び出た部分がピストンピンと常に接触していて、やがて肉が薄くなり、切れてしまい破片がエンジンに入り、ピストンとシリンダーにダメージが入ります。
のの字型のサークリップを使用している方は、エンジンをばらした時に一度、サークリップを確認してください。
サークリップの内側に飛び出た部分がピストンピンとの接触で摩耗しているはずです。
できればピストンピンとピストンサークリップは純正を使ってください、 ピストンピンも台湾製はよく抜けなくなるので。
まとめ 台湾製の原付ボアアップキット
なんで台湾ボアアップキットが遅いのか?
台湾製ボアアップキットが遅い理由は台湾製のシリンダーはノーマル排気量をベースにボーリング加工しているので、排気ポートと掃気ポートの位置が低いので高回転まで回らずパワーが出ないからです。
パワーが出ないから台湾ボアアップキットはダメなのか?
そんなことなくて、台湾ボアアップキットでもポート加工すれば速くなります。
なので、台湾製のボアアップキットはポート加工ができる方向けです。
ポート加工ができない方は、キタコかデイトナなどのメーカー製のボアアップキットを組みましょう。
以上、台湾ボアアップキットの解説でした。
コメント