先日、カワサキKZ1000のオイル交換を行いました。オイル交換の方法はホンダでもカワサキでも、旧車でも高年式のバイクで基本的には同じです。
しかし、使用するエンジンオイルの種類はたくさんあり、車種やエンジンの種類によって使用するエンジンオイルは変わってきます。
例えばバイクに自動車用のエンジンオイルを入れるとエンジンはオイルによって潤滑されますがクラッチが滑ります。これは車用のエンジンオイルに配合されているモリブデンなどの添加物が作用するからです。
私はこれまで15年以上原付からリッターバイクまで自分のバイクは自分で整備してきました。また、10年以上バイクレース参戦した経験もあります。
これまで得た経験をもとにこの記事では次のことを解説します。
- 旧車(Z1などの空冷Z)のオイル選び
- Z1/Z2/KZのオイル交換方法と必要なオイル量を解説
- 空冷Zのジェネレーターカバーのオイル漏れ修理
カワサキ空冷Z(Z1/Z2/Z1000)など旧車のオイル選びを解説
![カワサキ空冷Z(Z1/Z2/Z1000)などの旧車のオイル選びを解説](https://tkweblog.com/wp-content/uploads/2020/10/oiru.jpg)
KZ1000に使っているオイルは「モチュール 4T 5100」を使っています。
- ※Z1のサービスマニュアルではSEクラス10W-40が指定オイルです。
- ※KZ1000のサービスマニュアルでは10W40,10W50,20W40または20W50です。
交換頻度は1年に一回または、3000kmのどちらか早い方で交換しています。
エンジンオイル 化学合成油VS鉱物油
鉱物油の特徴
- 分子の大きさバラバラ
- エンジンの摩擦抵抗が大きい
- オイル漏れを起こしにくい(※)
- 低温、高温などの過酷な状況ではオイルの性能を発揮できない。
化学合成オイルの特徴
- 分子の大きさが細かく揃っている
- エンジンオイルの摩擦抵抗が小さい
- 分子が小さいので旧車オイル漏れが起こる(※)
- メーカー独自に添加剤を配合出来るので低温、高温に強いオイルが作れる
(※)
よく旧車はオイルが漏れるから化学合成油を選んではいけないということを耳にしますが、1960年代のバイクは分かりませんが、私のバイク(KZ1000の1970年代)は化学合成油を使っていますが全く漏れていません。
古いバイクはクランケースの合わせ面など加工精度が悪いことと、ガスケットの性能が悪いためオイルが滲んだり漏れるとのことですが、紙製のガスケットは加工精度の悪さも吸収できますし、コルクガスケットみたいに特殊な部品を使っていない限り漏れません。
Motul(モチュール)5100 4Tを選んだ理由
空冷Zを含めて旧車の多くは空冷エンジンです。
空冷エンジンの冷却は主にエンジンフィンでの放熱と走行風による冷却です。真夏の渋滞や信号待ちではエンジンオイルの油温が一気にあがります。
信号待ちのエンジンの冷却は走行風もなく、フィンによる放熱しかできなくなり空冷エンジンはエンジンオイルにとって厳しい環境といえます。
エンジンオイルが高温になると鉱物油では粘度を維持できず水のようにサラサラになります。そうなるとオイル油膜が金属の表面に維持できずエンジン部品にダメージが発生します。少々の摩耗やダメージなら許容できますが積み重なるとエンジンの部品どうしのクリアランスが大きくなります。
そうなるとどうなるのか?
エンジンの異音が大きくなったり、ピストンリングの摩耗によってエンジンオイルが混合気に混じる症状(通称:オイル上がり)が発生します。
エンジンのダメージを少しでも和らげるためにも旧車の空冷エンジンには添加剤を含んだ化学合成油をおすすめします。
Motulを選んだ理由は実績と信頼性です。
2ストローク用エンジンオイル モチュール800Vをレース用バイクにずっと使ってきました。
オーバーホールでエンジンの腰下を分解するときに粘性の高いオイルが残っていて、オイルとしての役割を果たしている印象です。実際にピストンリングの摩耗もメーカー純正の化学合成オイルと比較して差は歴然でした。
10年以上モチュールのエンジンオイルを使っていますがエンジンオイルのトラブルは一度もありません。
モチュールエンジンオイルにはエステルが配合されています。
エステルとは金属に引っ付きやすい磁石のような分子です。
熱に強く金属表面にひっつき易いため摩擦を減らすことができ、出力と燃費向上できるようです。
このKZ1000の使用状況はこんな感じです。
- 街乗りのみでサーキット走行しない
- 高回転を維持するような高負荷な使い方はしない
- 古いバイクなので出来るだけエンジン部品を労わりたい
このニーズに満たすのが5100 4Tです。
他にはレース向けの300V、7100Vがありますのが、街乗り重視なら5100です。
他のグレードに比べて安いですし。
粘度は高温時でも粘度を維持できるように10w-50-をチョイスしました。
カワサキZ1・Z2・KZ1000オイル交換方法を解説
![カワサキZ1・Z2・KZ1000オイル交換方法を解説](https://tkweblog.com/wp-content/uploads/2020/10/oiru7-e1602419230567.jpg)
カワサキZ1・Z2・KZ1000オイル交換用意するもの
オイルを4L(実際の使用量はおおよそ3.7Lです)
オイルフィルター
オイルフィルター用Oリングセット
カワサキZ1・Z2・KZ1000オイル交換
![ジャッキアップ](https://tkweblog.com/wp-content/uploads/2020/10/oiru1.5-e1602420458431.jpg)
最初にオイルを抜けやすくするために、ジャッキを使って車体をまっすぐにします。
抜く前に暖気をしてエンジンオイルを温めておくとスムーズにオイルが抜けます。
オイルを抜く前にオイルドレンパンを作成します。
![オイルドレンパンを作成](https://tkweblog.com/wp-content/uploads/2020/10/oiru4.jpg)
車用のドレンパンは大きすぎてバイクのドレンボルトの下に置けなかったので自作です。
先日、車のオイル交換に使った4L缶を使用します。
![自作ドレンパン](https://tkweblog.com/wp-content/uploads/2020/10/oiru5.jpg)
真ん中をカッターで切り抜きます。ペットボトル容器なので簡単に切り抜けます。
これで完成です。
![オイルドレンパン](https://tkweblog.com/wp-content/uploads/2020/10/oiru6.jpg)
オイルパンのサイズも高さもちょうどよいです。
今回はオイルフィルターも同時に交換します。
![エンジン下回り](https://tkweblog.com/wp-content/uploads/2020/10/oiru3.jpg)
下から見た写真
赤丸がオイルドレンボルト
青丸がオイルフィルターのドレンボルトとフィルターカバーの固定ボルト
下回りが汚いですね。。。
![オイルフィルタードレンボルト](https://tkweblog.com/wp-content/uploads/2020/10/oiru3.5.jpg)
青丸のドレンボルトを外して、フィルター内のオイルを抜きます。
しばらく放置してオイルを抜きましょう。
フィルター内のオイルが抜けるだけなので量は300ccほどです。
![フィルター固定ボルト](https://tkweblog.com/wp-content/uploads/2020/10/oiru8.jpg)
オイルが出なくなったら、真ん中のボルトを緩めてフィルターを取り除きます。
![オイルドレンの様子](https://tkweblog.com/wp-content/uploads/2020/10/oiru9.jpg)
フィルターを取り除いたら手前のボルトを緩めてエンジンオイルを抜きます。
実はこのバイク、なぜかドレンボルトがバカでかいボルトに代わっています。
多分、前のオーナーがボルトをつぶしたんでしょうね・・・
![オイルフィルターの取りつけの準備](https://tkweblog.com/wp-content/uploads/2020/10/oiru10.jpg)
抜いている間にオイルフィルターの取りつけの準備をします。
フィルターの部品はこのようになっています。
![オイルフィルター](https://tkweblog.com/wp-content/uploads/2020/10/oiru11.jpg)
組立は写真の通りです。スプリングを忘れずにキャップとフィルターの間に入れます。
オイルが抜けたのを確認出来たら、ドレンボルトとオイルフィルターを元通り締めましょう。
オイルを入れる前に・・・
空冷Z(Z1・Z2・KZ)のオイル漏れ対策。
空冷Zのエンジンのオイル漏れの原因はだいたいジェネレーターのメクラから漏れてきます。
案の定、このKZも多くはないですがオイル漏れが起こっているのでオイル交換のついでにオイル漏れを誤魔化してみます。
このオイル漏れは空冷Zエンジンの持病みたいなものですね。
ジェネレーターはオイルに浸かっているので、オイルを抜かないでカバーを開けるとオイルまみれになります。
![ジェネレーターカバー](https://tkweblog.com/wp-content/uploads/2020/10/oiru12.jpg)
DOHCマークのジェネレーターカバーを外します。
ボルトを外してもマグネットとガスケットでカバーは固定されているのでいきなり落ちることはありません。
外れたらゴムハンマーかプラスチックハンマーで叩きながらカバーを外します。
![](https://tkweblog.com/wp-content/uploads/2020/10/oiru13.jpg)
外れました。ローターとセルモーターギヤが確認できます。異常がないかついでに確認です。
たまに、セルモーターが空回りするのでいずれワンウェイクラッチの修理が必要ですね。。。
![](https://tkweblog.com/wp-content/uploads/2020/10/oiru14.jpg)
画像の黒いガスケットを盛ったところがオイル漏れの原因箇所。
大量の液体ガスケットを塗って一日放置して完全に乾かしてみました。
取りつけは逆手順で組みます。ガスケットは新品に交換しましょう。
空冷Z(Z1・Z2・KZ)のオイル漏れ修理結果
結果はかなり改善されましたが、まだほんの少し漏れています。
以前は床にオイルが溜まっていましたが、今は数滴程度に抑えられています。
次回オイル交換の時に配線のメクラを新品にします。
![ケース](https://tkweblog.com/wp-content/uploads/2020/10/oiru15.jpg)
エンジンオイルを入れます。
ケースには3700ccと刻印がありますが、ひとまず3500cc入れてレベルゲージを確認します。
![レベルゲージ](https://tkweblog.com/wp-content/uploads/2020/10/oiru16.jpg)
ケースのレベルゲージのアッパーとロアーの間にオイルがあれば完了です。
今回はオイルとフィルター込みで約3600cc入れました。
カワサキZ1/Z2/KZオイル交換と旧車にお勧めオイルのまとめ
![](https://tkweblog.com/wp-content/uploads/2020/10/oiru2.2.jpg)
以上でオイル交換の解説と旧車にお勧めのオイルの解説を終わります。
この記事を簡単にまとめてみます。
カワサキZ1/KZのオイル交換
オイルはMotul 5100 10W-50を使用
オイル量はフィルター交換込みでおおよそ3600cc使用。
4L缶を購入すると十分です。
オイル交換頻度は1年に1回または走行距離3000kmのどちらか早い方で交換
旧車におすすめのオイル
旧車は空冷エンジンが多くエンジンが過酷な状況に晒されるため化学合成オイルを使用してエンジン内部の摩耗や損傷を出来る限り抑えたい。
旧車に化学合成オイルを入れるとエンジンオイルが漏れると言われている。1970年代のKZ1000は化学合成オイルの使用しているが、エンジンカバーやクランクケースからエンジンは漏れていない。
長く旧車に乗りたいなら鉱物油<<化学合成オイルを定期で交換する。
カワサキ空冷Zのシム交換の方法はこちらから
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ハイオクとレギュラーの違いはこの記事から
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