今回はベアリングについて解説したいと思います。
今回の対象車種は、モンキーやエイプ、NSR50などの原付全般です。
大きいバイクには当てはまらないかもしれませんのでご了承ください。
話を戻して、ベアリングと言っても1台のバイクには数十個のベアリングが使われています。この中でよく交換するベアリングは
- クランクサイドベアリング
- ホイールベアリング
- ステムベアリング
ではないでしょうか。
整備好きな方はエンジン開けるとフルベアリング交換なんてこともあると思いますが、この3つは他よりも消耗しやすいベアリングなので長く乗っていると交換が必要なベアリングです。
その中でも今回はエンジンの中で最も重要なベアリングのクランクサイドベアリングについて、高速ベアリングを交換するとエンジンは速くなるのかどうかを解説していきたいと思います。
【結論】バイクのエンジンに高速ベアリングは要らない
クランクサイドベアリング用に発売されている高速ベアリングと呼ばれるベアリングは2種類のタイプがあります。
1.デイトナ、キタコなど市販パーツメーカーから発売されている高速ベアリング
2.その他、精密ベアリング。(パッケージの色が違っていたりする高級そうなベアリング)
デイトナ、キタコから発売されている高速ベアリング
各メーカーから発売されている高速ベアリングを入れてもエンジンは高回転まで回って速くなりません。
じゃあ、高速ベアリングが使えないのか?というと使えます。
ただし、キタコのベアリングについては樹脂製の保持器を使っているので純正ベアリングよりも寿命が短くなる可能性があります。
精密ベアリング
クランクサイドベアリングに精密ベアリングに入れ替えてもエンジンは速くなりません。 速くならないどころか、ベアリングが短寿命に終わってしまいます。
モンキー、NSR エンジン用のクランク高速ベアリングとは
まずは、市販のパーツメーカーから発売されている高速ベアリングについてです。
主にモンキーやエイプ、NSR50用に発売されています。
では、この高速ベアリングは普通の純正ベアリングと何が違うのか?
純正のベアリングと比較して保持器が違います。
保持器とはベアリングのボールの間隔を均一に保つためのベアリングに組み込まれた部品です。
純正ベアリングは薄い鉄板をプレス機で成形した打ち抜き保持器が使われています。
一方、高速ベアリングは砲金を削り出して成形したもみ抜き保持器や、樹脂製の保持器が使われています。
デイトナは砲金削り出しの保持器を使っていて高速回転に耐えることはできます。。
なぜ鉄板の保持器よりも、ゴツイ砲金の保持器が高速回転に耐えることができるのか?
それは薄い鉄板の打ち抜き保持器と比較して、砲金削り出しのもみ抜き保持器は高速回転でも変形せずに安定しているからです。
一方、キタコは樹脂製の保持器を使っています。
樹脂製の保持器は回転中の摩擦抵抗が小さく高速回転可能です。
回りはじめのトルクも他の保持器と比較して小さくなっています。
要するに回りやすい。ということです。
ちなみに保持器以外のベアリングの外輪、内輪、ボールについては純正と同じで精度も同じです。高速ベアリングとは保持器を変えて高速回転対応となっています。
※ちなみに精度については明確な記載がされていないので、外観を見て同じ精度と判断しています。
高速ベアリング(精密ベアリングとは)とは何なのか?
これはベアリングの精度そのものが良くなっているベアリングのことを言います。
ベアリングの精度が良いとは寸法を管理されたことをいい、精度が高くなるほどベアリングのガタや遊びが小さくなります。一般的にはP6、P5などがあって数字が小さくなるほど精度が高くなります。
なんで、精度が高いと遊びが少なくなるのかについては、例えば、ベアリングのボールのターゲット寸法が20mmの場合、P6では20.006mm、P5では20.003mmになります。P5の方が20mmの基準寸法に近くなっているので、精度が良いというわけです。
精度が高くなるとベアリングのガタも少なくなり、高速回転が可能になります。
ちなみにボールの規格はインチ表記なので、実際にはこんなにきっちりした数字にはなりません。今回は分かりやすく例えるために例に出しました。
高速ベアリングや精密ベアリングを使うとバイクのエンジンは速くなるのか?
高速回転まで対応する高速ベアリングを入れてもバイクは速くなりません。
なぜか?
高速ベアリングを入れてもエンジンの最高回転数は変わらないからです。
エンジンが15000回転しか回らないエンジンに2万回転まで回るベアリングに交換しても、エンジンは15000回転しか回りません。
これは当たり前ですね・・・
ベアリングの役割はエンジンパワーをロスなく駆動系に伝えることです。
高回転まで対応しているので許容回転数は高くなりますが、エンジンのポテンシャルが上がるわけではありません。
ベアリングを交換してもエンジンのパワーは上がりませんね。
ただし、デイトナの砲金保持器のタイプはベアリングの耐久性が少し上がります。
これは実際に使った感覚的ですが、鉄板打ち抜き保持器よりも耐久性が上がると思います。
一方、キタコの高速ベアリングを使う時は、普通のベアリングよりも寿命が短くなる可能性があるので注意が必要です。
理由は樹脂製の保持器を利用しているからです。
樹脂は鉄や砲金と比較すると、温度やオイルなどの油に弱いため保持器の劣化が速いです。使用しているエンジンオイルによってはすぐにダメになる場合があるので、街乗りで使用する場合はデイトナを使用した方がいいです。
しかし、ベアリングの摩擦抵抗が小さいのでエンジンの回転抵抗を少なくできます。頻繁にメンテナンスするレース用のエンジンの使用がいいのではないでしょうか。
正直、純正と比較して体感するほどパワーには直結しないです。
パワーチェックをしたことないんで、知らんけどw
ちなみにTeam澤では、デイトナ製のような砲金保持器のベアリングを一時期使っていました。
しかし、今は純正を使っています。 理由は交換しても大きな効果がなく、クランクサイドベアリングは頻繁に交換する部品なので、高速ベアリングを入れて耐久性を上げるよりもノーマルをこまめに交換した方が効果が高いと思っています。
なぜ精密ベアリングを入れてもエンジンが速くならないのか?
精密ベアリングとは精度が良い部品でボールや外輪を組み合わせたベアリングで通常よりもガタが小さく高回転までスムーズに回ります。
精度の良いベアリングをバイクのエンジンに組んでもエンジンは速くなりません。ガタが少なくなって回転がスムーズになるどころか、逆にエンジンの抵抗になります。
なぜか?
理由は、ベアリングの精度以上にクランクケースを精度が良く組むことが出来ないからです。そんなこと言っても、ベアリングのはめあいでケースが固定されるからキッチリ精度でるのでは?という意見もあるかもしれません。
たしかに、クランクとケースと合わせた状態では、クランクの軸とベアリングの中心軸があっているかもしれません。
しかし、そこでボルトを締めるとクランクとベアリングの同軸は保てなくなります。
ボルトのトルクも原因のひとつですし、ケースがひずんでいたり、合わせ面の平面がでていないことも原因です。
ベアリングとクランク軸の同軸が出ていない場合、その芯がずれた分はベアリングが吸収することになります。精密ベアリングを使っていた場合、ズレが吸収できなくなりスムーズに回るベアリングが抵抗になります。
精密ベアリングの使用用途は工作機械のスピンドルやモーターなどです。
モーターやスピンドルの軸は1本ものです。ベアリングと軸をケースに組んでも精度が出ます。
一方、クランクシャフトはコネクティングロッドや軸など複数の部品を組み合わせいます。
複数の部品で組み合わせた軸では、軸がまっすぐにならないので精密ベアリング実力は発揮できません。
1/1000ミリでクランクの芯だしが出来て、クランクケースとクランクの同軸がきっちり出るなら精密ベアリングを使う意味がありますが、このような奇跡の組み合わせはなかなかないと思います。
モンキーやNSRに高速回転ベアリングは要らない!!まとめ
今回は高速ベアリングについて解説してみました。
モンキーやNSR50用に高速ベアリング高速ベアリングが発売されています。
高速ベアリングの特徴は以下の通りです。
デイトナ高速ベアリング
普通のベアリングの保持器に砲金を採用。保持器の剛性が高く高回転まで対応。
ベアリングの寿命も延びるので、街乗りのエンジンで余裕があるなら交換すると効果的。
レーサーのエンジンは頻繁にベアリングを交換するのであまり恩恵は受けることができないと思います。
キタコ高速ベアリング
普通のベアリングの保持器に樹脂を採用。回転の摩擦トルクが下がるので高速回転まで対応。保持器が樹脂になっているので、エンジンの高温やオイルの影響を少なからず受ける。
樹脂の保持器が劣化するため街乗りにはおすすめしません。
レーサーではベアリングの回転抵抗が減るのでエンジンが回りやすくなる効果があります。
精密ベアリング
外輪やボールなどベアリングを構成する部品の精度を上げて組んだのが精密ベアリングです。
通常のベアリングよりもボールのあそび(ガタ)が少なく高回転まで安定して回ります。精密ベアリングはモーターや工作機械の軸に使われます。
コネクティングロッドやクランク軸など部品を組み合わせたクランクに合わせケースだと精密ベアリングの精度で組むことはできません。
結局、クランク軸とベアリングの同軸がずれてしまってベアリングに負担がかかりベアリングが回転抵抗が大きくなり、短寿命になります。
高速ベアリングを組んでもエンジンの最高回転数は決まっているのでエンジンは速くなりません。
ベアリングはエンジンが回りやすくなるように助ける役割です。高速ベアリングを組むことでエンジンがスムーズに回りやすくなりますが、回転数はかわりません。
高速ベアリングを組むなら、許容回転数が上がって、寿命も上がるデイトナの高速ベアリングがおすすめです。
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