先日、カワサキのKZを走らせると、坂道発進でエンストしました。
普段、発進ミスでエンストは滅多にしないのですが、バイクを路肩に移動しようとすると全く動きませんでした。フルパワーでバイクを押すとようやく動きました。
ブレーキを確認するとキャリパーの表面がかなり熱くなっていたのでどうやらピストンが戻らないことでブレーキが引きずっているようです。
マスターシリンダーの蓋を開けるとブレーキフルードがサビで茶色に変色していたのでブレーキのオーバーホールをすることにしました。
この記事では
カワサキ KZのキャリパーオーバーホールの手順を解説しています。
いつものように使える部品はとことん再利用!
貧乏オーバーホールです
カワサキ KZのマスターシリンダーオーバーホールの様子はこちらです。
ブレーキは重要部品のため分解・組立は自己責任でお願いします。
当然ですが、何かあっても責任は一切取れません。
カワサキZ1・Z2・KZ ブレーキキャリパーの分解手順
今回はブレーキキャリパーをフルオーバーホールするため、キャリパーを外す前に裏側のキャリパーシャフトナットを緩めます。
キャリパーシャフトはキャリパー単体でも緩めることは可能ですが、固く締まっているので最初にやっておくほうがベターです。
ボルトを抜く必要はなく緩めるだけです。
キャリパーを外します。
青〇のバンジョーボルト、エア抜き用のボルト緩めます。 こちらも完全にボルトを抜く必要はなく緩めるだけで緩めるとフルードがにじみます。
あとでキレイに拭き取りましょう。
赤丸のキャリパー固定のボルトを緩めて取り外します。
青〇のボルトも完全にゆるめてキャリパーを外します。
うーん・・・やっぱり、茶色の変色したフルード液が・・・
こんな色になったブレーキオイルは見たことがないです。
よくあるのが薄い茶色になってタッチが悪くなります。
車検毎の交換が推奨されているブレーキフルードですが、私はタッチが悪くなったら交換しています。 レーサーのバイクも3年ほど変えていないかも・・・
オーバーホールとは関係ありませんが、キャリパーを固定するボルトにスプリングワッシャーが単体で使われていました。
ゆるみ止めとしての効果がありますがワッシャーと併用します。単品ではあまり使いません。
ご覧の通りアルミ製のフォークのブラケットはキズだらけになっています。
しかも、このバイクスプリングワッシャーが単体で使用されていたのですべて取りました。
キャリパーを分解します。先ほど緩めたナットを取り外します。
プラスドライバーでパッドを固定しているボルトを取り外します。
パッド交換のみの場合は、パッドを固定しているプラスのボルトを取り外すだけでOKです。 ナットが取り外したらボルト2本とも抜きます。
①:ピストン側ブレーキパッド
②:固定側ブレーキパッド
③:ピストン用ダストシール
④:ブレーキパッド固定用のキャリパーホルダー(ブラケット)
ボルトが抜けると④キャリパーホルダーが外れます。
ピストン側の①ブレーキパッドはキャリパーホルダーで支えられているだけなので固定されていません。キャリパーホルダーと一緒に外れます。
反対側の②ブレーキパッドは前のようにプラスねじで固定されているのでパッド交換のみの場合は簡単ですね。
いよいよキャリパーのピストンを取り外します。
やり方はいろいろあります。
私は家に家庭用コンプレッサーがあるのでエアの力を利用して取り出しています。
やり方は簡単です。 バンジョーボルトのねじ穴よりエアガンで空気を送るだけです。
ピストンに指を挟まれると大けがします。
エアを送る前にかならず何枚か重ねたウエスをピストンとキャリパーの間に挟みましょう。
指を挟まないように注意してください。 圧縮空気の勢いはかなり強いです。
コンプレッサーがない方はこの特殊工具を使います。
キャリパーピストンツールですね。
使い方は簡単で、ピストンの内側を挟んで抜き取るツールです。
私はいつもエアーガンでエアーの流量を調整しながらやっています。サービスマニュアルもこの方法で解説されていました。
ブレーキオイルシールを取り外します。 ブレーキのオイルシールなど細かい作業は写真の工具が便利です。
シールの取り外しのほかにも、コネクターの取り外しや配線カプラの端子を取り外す時にも非常に便利です。
すべて分解できました。
ご覧の通りサビでかなり汚れています。ここまでフルードがサビで汚れているのは初めてです。
これから洗浄後、組立を行います。
カワサキZ1・Z2・KZ ブレーキキャリパーの洗浄とグリスアップ
ブレーキの洗浄はパーツクリーナーか白灯油で洗浄します。 今回はパーツクリーナーでキレイにしました。
ブレーキのダスト、サビ取りなどは画像の研磨パッドを使用します。 ブレーキパッドボルトにも使用できます。
ピストンに使用するときは必ず円柱方向に磨きます。
軸方向だとオイル漏れの原因になります。
仕上げにピカールで磨きます。
これくらいのサビならピカールで簡単に落ちるので便利です。
カワサキZ1・Z2・KZブレーキキャリパーの組み立て
KZ1000サービスマニュアルより引用
いよいよ組立に入ります。
最初に部品を用意します。
ブレーキ引きずりが原因でキャリパーをオーバーホールする時はシール交換を行いましょう。
・ブレーキピストンダストシール
・ブレーキオイルシール
左右2セット必要です。PMCより復刻パーツが出ているので新品が購入できます。少しお値段は少し張りますが・・・
余裕があればピストンも新品に交換しましょう。
組立にはスズキのメタルラバーがおすすめ!シリコングリースって長時間経過すると固まってしまいますが、メタルラバーは液体なので馴染みやすくて使いやすいです。
今回はシリコングリースしかないのでシリコングリースを使いました。
ピストンシールにシリコングリースを塗ります。
グリースを全体に広げます。量は少しで大丈夫です。 今回は、シールは再利用しました。あまりいい状態ではありませんが、予備部品を買っていなかったのでとりあえず、元に戻しました。
後日交換します。
キャリパーに取り付けます。そんなに難しい作業ではないです。
シールによっては向きがある場合があるので、取り外した時に確認します。 KZはありませんでした。
キャリパーホルダーのシールが入るところと軸穴にもシリコングリースを塗ります。
先にキャリパーホルダーを組みます。
ボルトは仮止めで、最後に増し締めでOKです。
この状態で本締めしても問題はありません。
取りつけました。シールがきっちり嵌っているか確認しましょう。
ピストンを組む前にシールと同様にシリコングリースを薄く全体に塗ります。
キャリパーにピストンをゆっくりと挿入します。
ピストンは必ずまっすぐに組みましょう。シリコングリースで十分に濡らしているので大丈夫だと思います(笑)
ダストシールも同様にシリコングリースを塗ります。内側だけでOKです。
キャリパーに装着します。
写真ではキャリパーホルダーがつけていませんが手順を間違いました。
この後ピストンを取り外して、ホルダーを取りつけています(笑)
キャリパーが組みあがりました。 続いてブレーキパッドを組んでいきます。
キャリパー側のブレーキパッドを組みます。 プラスビスでメタルプレートと、共締めするだけなので簡単です。
ピストン側のブレーキパッドをキャリパーホルダーに取り付けます。 取りつけのボルトなどはなく、キャリパーホルダーに置くだけです。
KZ1000のサービスマニュアルより引用
向きがあるので注意してください。
フォークに取り付けます。
フォークとキャリパーの締め付けトルクは3.4~4.6kg・mです。
マニュアルではスプリングワッシャーとワッシャーを使用するように明記されています。
キャリパーシャフトナット(締め付けトルク:2.4~2.8kg・m)が締まっているか確認します。
バンジョーボルト(締め付けトルク:2.9~3.1kg・m)
エア抜きボルト(締め付けトルク:0.7~1.0kg・m)
を取りつけます。
Z1・Z2・KZ キャリパーオーバーホール まとめ
以上でキャリパーのオーバーホールが完成です。
難しい作業はなかったと思います。
初心者でもじっくりやればできると思います。 しかし、ブレーキは整備ミスが許されない危険な作業なので、分からないことがあればプロのバイク屋さんにお願いしましょう。
古いバイクは簡単にレストアできることは稀です。
ボルトが腐食して外れなかったり折れてしまったりすることは多々あります。
今回はスムーズにオーバーホール出来ましたが、再使用が不可能なまで腐食している場合は思い切って新品を買うのも手だと思います。
バージョンアップしてブレンボキャリパーなんかもいいですね。
オーバーホールしても、最近のバイクと比べるとブレーキが全然効かないです。
もし疑問や質問がある場合はコメントをお願いします。
次の記事については、ブレーキのエア抜きについて解説していきます。
コメント